SHIROのIchigoJam日記

マイコン「IchigoJam」(イチゴジャム)の電子工作とプログラミングをメインに

大人の皆さんへ:(8)怒る回数を減らすには?〈口で言うより紙に書く〉

 前回の記事で「受容(無条件の肯定)」という話を書きましたが、実際は私達大人は子どもに対して「〜しちゃダメ」と怒ることが多いです。
 もちろんちゃんと怒るべき時は怒らないといけないのですが、怒る必要の無い場面も結構あるように、私は思います。
 どうやったら怒る回数を減らせるのか? ちょっと考えてみましょう。
 私がいる情報センターでは、春・秋のシーズンになると、近辺の小中学校から遠足や社会見学で子ども達が訪れます。
 「中庭で記念撮影」「ホールでビデオ上映」「ギャラリーで体験」と館内をあちこち移動するのですが、たくさんの子ども達を引率する先生を見ていると、「早く集まれ!」「騒ぐな!」などと怒ったり怒鳴ったりしていることが多いです。こちらから見ていて、「そんなに怒る必要無いのにな」と思うことがあります。
 口でいちいち怒鳴るよりも、せっかく子ども達は「遠足のしおり」などの冊子や紙を持っているのですから、そこに館内の図、動線の矢印などと、

 10:00 中庭で記念撮影
 10:10 1組:ホールでビデオ視聴 2組:ギャラリーで体験
  …

…とスケジュール表を載せればいいのです。
 口で言う「話し言葉」は、言ったその場で消えてしまいます。子どもからすれば、耳で聞いて、言葉を理解して、記憶に留めないといけないので、とても難しくわかりづらいのです。
 紙に「書き言葉」で図やスケジュール表が書かれていれば、自分で目で見て何度も確認できるのでわかりやすくなります。
 つまり、怒らなきゃいけなくなるのは、大人側の準備が足りないのです。子どものせいではなく、事前にそうした資料を準備していない大人のせいなのです。
 逆に、大人がちゃんと事前準備をしていれば、子どもを怒る回数はかなり減らせます。
 レディースコミックで「光とともに…」という作品があります。

  戸部けいこ光とともに… 〜自閉症児を抱えて〜」
 (最新14巻)http://www.amazon.co.jp/dp/425310584X/

 自閉症児の息子・光くんを育てる母親・幸子さんを主人公に、自閉症児の成長、子育ての苦労や工夫、受け入れる側の学校や社会の問題などを描いた名作です。自閉症児だけでなく、一般的な子どもとのコミュニケーションについても、とても勉強になります。
 「自閉症」と言うと、漢字の字面から「自分の殻に閉じこもっている精神状態」と考えられがちなのですが、それは全く間違いで、先天的な脳機能障害で起こる病気です。
 例えば教室で先生の話を聞く時、私たちの目には、話す先生以外にも、教室の黒板、天井の蛍光灯、前に座っている人の頭、窓の外の景色など、様々な物が見えています。しかし私たちの脳は無意識の内に高度な処理をして、「今一番注意を向けるべきなのは、話している先生だ」と選別して、他の不要な情報を捨てています。
 ところが自閉症の人は、脳の中でそれらの情報の受信や選別がうまくできないようで、何に注目していいかわからずに混乱してパニックになったりします。
 最近の研究で、自閉症はこのような先天的な脳機能障害で起こる病気だとようやくわかってきました。親の子育てや、テレビやゲームのせいで自閉症になるわけではありません。たまにそのように書いてある本がありますが、全くの間違いです。
 話が長くなりましたが、そんな自閉症の子どもとうまくコミュニケーションを取るには、「話し言葉」より「書き言葉」が有効です。
 「光とともに…」でも、幸子さんは壁の時計の下に「8時」を指した時計の絵と、保育園へかぶっていく帽子の絵を貼り、その絵を指さして「8時です。保育園へ行きます」と光くんに伝えます。口で言うだけでは伝わらないのですが、絵と時計を目で見比べることで、光くんにも「保育園へ行く時間になったのだ」とわかります。
 最近は自閉症の人などに向けた、絵と音声を組み合わせてコミュニケーションを補助する「VOCA」(音声出力型コミュニケーションエイド)と呼ばれる機器が出てきています。例えばこちら
 そして、携帯電話をVOCAとして使うサービスもあります。携帯のカメラで写真を撮って、それに関連した文字を入力して、画面に写真を表示しつつ音声で読み上げるものです。
 病気や障害を持つ人にとっては、携帯も有用なツールになります。
 まとめると、子どもに何か指示を伝えるには、口で言う「話し言葉」よりも、絵・文字・図・表などの「書き言葉」をできるだけ使いましょう。紙でもホワイトボードでも構いません。
 準備するのは大変かもしれませんが、その分子どもへ怒る回数を減らせます。スケジュール表や図をせっせと作る方が、子どもへガミガミ怒るよりも、親もストレスにならないでしょう。