アニメ映画「借りぐらしのアリエッティ」を観てきました。
まずは、小さいアリエッティの目線から見た世界の描写がおもしろかったですね。佐藤さとるさんの「コロボックル物語」シリーズを思い出して、コロボックル達の眼から見る世界もこんなかなあ?と思って見ていました。
また、小人達が人間が作った物を「借りて」暮らす様子もおもしろかったです。
…という感じで、視覚・映像としてはとてもおもしろかったんですが、ストーリーとしては、うーん、どうでしょうか。いわゆる「起承転結」の「転」が弱くて、最後までそのまま行ってしまった、そんな印象を受けました。
借りぐらしの人々には「人間に見られてはいけない」「見られた場合は引っ越さないといけない」という掟があるのですが、結局そのルールはそのまま適用されてしまい、アリエッティたちは去って行きます。せっかくストーリーの山や伏線がいろいろあるので、これまでの掟を壊す、あるいは変革する形の違うエンディングだったらよかったのに、と個人的に思いました。
例えば「もののけ姫」でも、人間ともののけは結局「相容れないもの」として描かれたのですが、「簡単なハッピーエンドや予定調和のストーリーは作らない」というスタジオジブリや監督の意志なのでしょうか。
あるいは、原作(メアリー・ノートン「床下の小人たち」)がある話なので、そちらを読んでみないとわからない所かもしれません。
ストーリー中に「種としての生存」といったテーマが出てくるのですが、「借りぐらし」をしている時点でアリエッティ達は人間に依存しています。前述の「コロボックル物語」のコロボックル達が、時に人間が作った物を利用しつつも基本的に自活しているのと対照的で、映画の中でも自分達の力で生活の糧を得る(例えば作物を育てて収穫する、動物を狩るなど)シーンはありません。そうした「借りぐらし」の前提がある以上、彼らの「自立」や「変革」を描くのは難しかったのかもしれません。
それでも、お母さんのホミリーが過去の掟にただ縛られ、「こんないい家から離れたくない」と嘆き、人間に見つかっても恐怖に震えるだけなのに対して、若い次世代のアリエッティは翔との交流の中から新しい可能性を見つけようとしている、そんな雰囲気は感じられました。
全体的には、「崖の上のポニョ」より作り方が大人向きなので、大人も楽しめる作品だと思います。夏休みに家族で観に行ってみてはいかがでしょうか。