SHIROのIchigoJam日記

IchigoJamの電子工作とプログラミングをメインに

ネット依存報道について(3)

ネット依存報道のその後ですが、日大医学部のサイトで報道向けの発表資料(か、その元となる資料)を見つけました。

日本大学医学部 社会医学系 公衆衛生学分野
http://www.med.nihon-u.ac.jp/department/public_health/gakunen-dayori.html
この中の「H24年度喫煙飲酒全国調査結果(インターネット依存)」というリンクです。
PDFファイルはこちら。
http://www.med.nihon-u.ac.jp/department/public_health/2012_ck_KI.pdf

これによると、そもそもの研究テーマは「未成年の喫煙・飲酒状況に関する実態調査研究」で、「平成24年度厚生労働科学研究費補助金 循環器疾患等生活習慣病対策総合研究事業」による研究のようです。
これは、先のブログ記事で書いた厚生労働省平成24年度の成果表と合致します。
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000036w7i-att/2r98520000036wi1.pdf
「研究代表者」が日大医学部の大井田氏で、「研究分担者」として、久里浜医療センターの樋口氏の名前が入っています。

この資料は恐らく発表用のPowerpointスライドをPDF変換したものと思われますが、さまざまなことが読み取れます。

●メインテーマは喫煙・飲酒問題で、途中からネット依存の話が「突然」出てくる

パッと見て気付くのは、全部で23枚あるスライドの内、15枚目までは研究テーマの通り喫煙・飲酒問題に関する資料なのですが、16枚目から本当に突然に「インターネット依存」の話が出てくることです。それまでの「研究ミッション」や「調査方法」の説明にいっさい「ネット」という言葉が出てこないのに関わらず、です。
しかも注目なのは、スライド3〜4枚目で調査方法について説明されているのですが、わざわざ「2012年度調査の方法 未成年飲酒喫煙調査」「全国調査の概要(喫煙、飲酒行動)」と、「この説明は『飲酒・喫煙行動に関する調査』についてのものである」と読めるただし書きがあります。言い換えれば、ネット依存に関する調査がどのような方法でなされたのか説明されていないのです。勘ぐって読めば、飲酒・喫煙に関する調査は中高生10万人の回答数があったのかもしれませんが、ネット依存に関する調査についてはベースとなる回答数などの諸元が不明だということです。

●ヤング氏の基準に当てはまった子どもを「病的使用」と決めつけている

スライド16枚目に「インターネット依存」のグラフがあるのですが、調査方法の説明?として「Young Diagnostic Questionnaire for internet Addictionを翻訳」と書かれています。
そして評点5点以上を「病的使用」と表記し、「2012年の中学高校の生徒数(全国)と頻度より算出」という根拠から、「51万8千人」という数字を出しています。
しかし、先のブログ記事で書いたように、ヤング氏の基準はあくまで「5個該当したら診断を受ける必要があると考えられる」というスクリーニングに過ぎず、「ネット依存症」という診断が確定するものではありません。ここではそれを「病的使用」と断言してしまっています。かなり恣意的で、問題のある説明だと思います。

●無理矢理抱き合わせたのではないか?

これは私の推測ですが、元々の研究テーマである「青少年の喫煙・飲酒」に関するアンケート調査をする際に、(恐らく久里浜医療センターの樋口氏の意向で)ネット依存に関する調査を抱き合わせで行ったのはないでしょうか。
そして発表資料でも、後半にネット依存に関する結果を無理矢理追加したように見えます。区別するために、後から調査方法の説明に「喫煙、飲酒行動」などのただし書きを追記したのではないでしょうか。

★メディアの姿勢

この資料が、厚生労働省で行われた発表で使われたのかどうかわかりません。もしかすると記者発表の際は別の資料だったのかもしれません。
しかし、もしこの資料が発表で使われたのならば、前半部分の「研究のメインテーマは飲酒・喫煙問題」という部分を、なぜ報道で取り上げなかったのでしょうか。あるいはネット依存に関する調査方法や、「病的使用」とした判断基準について、記者は誰も疑問に思わなかったのでしょうか。
メディアの報道姿勢に、改めて考えさせられます。