SHIROのIchigoJam日記

IchigoJamの電子工作とプログラミングをメインに

「環状白馬線 車掌の英さん」(都戸利津さん)

19日に花とゆめコミックススペシャルで発売された「環状白馬線 車掌の英〈はなぶさ〉さん」をご紹介します。
作者は都戸利津(みやこ・りつ)さん。別冊花とゆめに単発で3本が掲載された作品で、あまり知られていないのですが、女性だけでなく男性にもお勧めできる佳作です。

4592187075環状白馬線車掌の英さん (花とゆめCOMICSスペシャル)
都戸 利津
白泉社 2009-01-19

by G-Tools
主人公は、シティを循環する電車「白馬線」に乗る車掌の英さん。長髪でぶっきらぼうな青年車掌です。
物語は、彼がほんの少しの間一緒に過ごす乗客たちとの出会いや関わりを、オムニバス形式で描いていきます。
田舎から初めてシティに出てきた女性、仕事をクビになった自分を嘆く青年、拾った犬を連れた少年など…
物語が進むうちに、実は英さんは、小さい頃に白馬線の電車に置き去りにされた孤児で、その時乗っていた車掌に拾われた境遇であることがわかってきます。
やがて車掌見習いになった英さんは、自分を拾った車掌に疑問をぶつけます。
「いつまでも他人で、みんな降りて行っちまうなら、俺や白馬線は何のためにあるんだ?」
先輩車掌であり、義父である英氏はこう答えます。
「ここにゃ何も生まれねぇが、俺たちが街や人をつないで生まれる何かもあるだろうさ。俺もだぁれもそれを知らねぇだけでな」
中学3年の9月のある日、僕は一人、電車に乗って旅をしていました。
当時発売されたばかりの「青春18きっぷ」を使って、一日中電車に揺られる旅でした。
その中で一番印象に残ったのは、車窓から見る景色ではなく、行く先々で出会った、自分と同じ中学生の姿でした。
仲良く楽しそうに遊びに行く2人組、部活帰りの野球ユニフォームの集団、自転車に乗って家路を急ぐ女の子たちなど…
それまでの僕は、転校した学校に馴染めず仲間外れなどの憂き目に遭っていたのですが、旅先で彼らの姿を見て、自分が全国にいる多くの中学生の一人であること、自分がそれらの人と出会うことで、自分の人生は他の多くの人生とどこかでつながっていること、などに初めて気づきました。
その旅は、いわば”自分”と”世界”とのつながりを初めて自覚した日になったのです。
車掌として生きる英さんは、狭い白馬線の中しか知りません。
でも、彼はつかの間でも多くの乗客と出会うことで、外の広い”世界”とどこかでつながっているのです。
そして英さんがいることで、誰かが出会い、誰かの人生が変わっていくかもしれません。
いつしか、人々は噂します。
「英さんの電車に乗った人は幸せになれる」
当の英さんは、ぶっきらぼうに答えます。
「俺はただの車掌だ」
私たちは日々の地味な生活の中で、「自分は誰かのためになっている」とどれだけ実感しているでしょうか。
それを自慢もせず、恨みもせず、淡々と「ただの仕事だ」と言えるでしょうか。
そんな人にも、そうでない人にも、お勧めする作品です。よかったら読んでみてください。