SHIROのIchigoJam日記

IchigoJamの電子工作とプログラミングをメインに

「携帯禁止」に物申す:(9)統計は時にウソをつく

 例えば、ある大学の先生の調査結果が、「携帯を長時間使っている子どもはキレやすい」などとセンセーショナルな見出しが付いて、マスコミに取り上げられることがあります。
 しかし、こうした統計調査は、よくよく考えて解釈しないと意味を取り違えてしまいます。マスコミの報道をそのまま鵜呑みにしてはいけません。
 仮に、「携帯を長時間使っている子どもはキレやすい」と見出しの付いた研究があったとしましょう。
 こうした研究では、たいがいアンケートなどで実態調査をします。
 まず「あなたは(あなたの子どもは)一日に何時間携帯を使っていますか?」という設問で、携帯の使用時間を把握します。
 もう一つの「キレやすい」をどう調査するかは難しいのですが、同様に日頃の行動の様子を質問して把握します。
 その結果をグラフにプロットして統計的な計算をすると、直線や曲線が描けます。

 しかし、このようなグラフが描けるからと言って、「携帯を長時間使うとキレやすくなる」と結論づけるのは間違いです。
 いろいろ突っ込み所はあるのですが、以下に書いていきます。

この結果から言えるのは「関係がある」ことだけ

 このグラフから言えるのは、「携帯の使用時間と、キレる行動の数の間には、関係がある」ということだけです。「携帯の使用が原因で、キレる行動が起こる」とは言えないのです。
 もしかすると何か別の「原因」があって、「携帯の使用時間が長い」と「キレる行動が多い」は、その原因から生じた2つの「結果」かもしれません。

 同じ原因から生じた2つの結果だったら、その数量をグラフにすれば互いに関係があるのは当たり前です。
 つまり、グラフ上で関係が認められたからと言って、片方が原因で片方がその結果であるとは限らないのです。
 こうした研究結果を見て「キレる行動を防ぐために携帯を禁止しよう」と対策を取ったとしても、別の原因があるのなら何の意味も無いことになります。

表の行動の調査だけでは「どんな気持ちでいるか」はわからない

 こうした研究結果を見ていて私が不満に思うのは、子ども達の「気持ち」の部分がなかなか調査されないことです。
 例えば「携帯の使用時間」を調査しても、「その子がどんな気持ちで携帯を使っているのか」という内面の心理はわかりません。
 また、「キレる」行動調査についても、突然に突拍子もない行動をするように大人からは見えても、子ども本人にとっては確かな理由があるのかもしれません。日頃少しずつたまった不満やストレスが、その時に臨界点に達して爆発したのかもしれません。
 これは携帯電話ではなくゲームの例ですが、私の知り合いのあるお母さんから「うちの小学生の息子がゲームばかりやっていて困る」という相談を受けました。
 いろいろ聞いてみると、その息子さんはすごく自己評価が低くて、「僕なんてダメダメだ」とよく言っているそうです。
 ここで彼の内面を考えてみると、もしかすると彼にとってゲームは、現実のダメダメな自分から一時的にでも脱出できる「場」なのかもしれません。ゲームの中では自分も勇者やヒーローになれるのですから。
 そんな彼に「ゲームしちゃダメ」と言ってゲーム機を取り上げたとしたら、彼にとっては活躍できる唯一の場を奪われてしまうことになります。彼の不満はくすぶり、将来全く違う形で爆発してしまうかもしれません。
 彼に対して我々大人がしなければいけない対策は、ゲーム機を取り上げることではなく、現実の生活の中で「自分は大切な存在だ」と思えるような環境を作ることなのです。そうすれば、結果としてゲームをする時間は減っていくでしょう。
 (あくまで「結果」に過ぎないことに注意してください)
 携帯の調査の話に戻りますが、目に見えない「気持ち」は調査して数値化するのが難しいので、研究結果としてなかなか出てきません。逆に、表の行動の調査だけでは子ども達の内面はわからない、ということを私たちは認識しておかないといけません。

他の条件は同じなのか? 本当にそれが原因なのか?

 こうした調査や実験では、注目する項目以外は同じ条件でないと、本当は比較ができません。
 例えば「携帯の使用時間」で考えてみましょう。
 どんな子どもにも一日は24時間しかありません。学校の授業時間、睡眠や食事などの時間は除いたとすると、実際に携帯に振り分けられる時間はそう多くないでしょう。
 仮に一日3時間携帯を使う子がいたとすると、その分何かの時間が減っているということになります。問題の本当の原因はそちらかもしれません。
 ここで携帯に否定的な人は「親子の対話の時間が減っているからだ」「勉強時間が減っているからだ」などと言いたがるのですが、そうとは限りません。例えばテレビを見る時間が減っているのかもしれません。
 そうすると、上のグラフから考えて「テレビを見る時間が少ない子はキレやすい」という結論になります。「…何かおかしいな」と思いますか?
 調査対象の子ども達が、携帯の使用時間だけが違っていて、他の条件は全て同じである、ということはあり得ません。上のグラフが示しているのは、子どもの生活や行動のほんの一面に過ぎないのです。本当は何が原因なのか、子ども達に何が起こっているのかは、よくよく考えてみないとわかりません。

研究や解釈には、その人の意図が入りやすい

 そもそもこうした研究は、研究者の意図や先入観が入りやすいものです。取り上げた例にしても、「携帯を長時間使っている子どもはキレやすいに違いない」という先入観を持って調査をしたり、結果として出てきたグラフを「それ見た事か」と自分の思い通りに解釈してしまいがちです。
 本来は、「携帯の使用時間とキレる行動の間には関係があるのかどうか、わからないから調べてみよう」という公平な態度で研究しないといけませんし、出てきた結果についても「他に原因はないのか」「その解釈は正しいのか」とよく吟味しないといけません。

まとめ

 とりあえず「見方」「解釈の仕方」を提言したかったので、「携帯を長時間使っている子どもはキレやすい」という仮想的な例を挙げて書いてみました。
 こうした研究結果はいくつも出ているのですが、皆さんがそれらを見て考える際の参考になれば幸いです。
 くれぐれも、マスコミのセンセーショナルな見出しに踊らされないようにしてください。マスコミはその場の視聴率や読者数のために、派手な見出しで人目を引こうとすることが多いからです。
 また、偉い大学の先生が発表した研究結果だからと言って、信用できるとは限りません。人の肩書きではなくて、あくまでその研究の中身で判断しないといけないのです。
 これらは一種のメディアリテラシーで、情報社会に生きる私達はよくわきまえておく必要があります。